こんにちは。今回は、乃木坂46の5期生楽曲「バンドエイド剥がすような別れ方」に出てくる数式について解説します。
バンドエイド剥がすような別れ方の数式について
バンドエイド剥がすような別れ方は、2曲目となる乃木坂46の5期生楽曲になります。センターに立つのは菅原咲月です。その爽やかな曲調と青を基調とした繊細な色使いをされたMVが相まって、期別曲としては異例のスピードで再生されている楽曲です。
そんなバンドエイド剥がすような別れ方ですが、一際目を引く箇所があります。それは、MV中に登場する”数式”の存在です。その数式はMV冒頭0:20〜に登場します(その箇所はこちら)。MVを見て、「なんだこの数式の羅列は?」と思った人も多いと思います。なので、今回はそんなMVに登場する数式について解説します。
題材は東京大2002年の入試問題
この問題ですが、題材は東京大学2002年の入試問題となっております。東大2002年理系数学の大問5がこれにあたります。問題は以下の通りです。
とりあえず、この問題の解説は後回しにして、この問題がどのような問題なのかをざっくり解説していきます。そして、これがどれだけ衝撃的なことかを説明します。
テーマは区分求積法
この問題は区分求積法をテーマした問題となっています。そしてこの区分求積法なのですが、一般の高校では数学Ⅲの積分法で扱うテーマとなります。つまり、彼女たちは数学Ⅲを履修中ということになります。
高校の数学のカリキュラムは数学I、A、II、B、Ⅲとなっていますが、基本的に文系は数学I、A、II、Bまでしか習いません。数学Ⅲは理系のみの履修です。つまり、MV中の高校のクラスは理系クラスということなり、当然、乃木坂46の5期生も理系ということになります。
なおかつ、井上和はそのMV中で東大の問題に関する質問を先生に投げかけられ、すらすらと答えることができてます。東大の問題を題材を扱うことからも、おそらくは進学校だと考えられます。
理系というと、どうしても女性が少なくなりがちですが、この学校では、女子生徒が教室いっぱいいっぱいに生徒が授業を受けています。女子高校の理数科とかでしょうか?すごいですね。
問題の解説
ここからは先程の問題の解説をしていきます。問題の解説に入る前に、区分求積法について軽く説明しておきます。
区分求積法とは
定積分を下記のような和の極限として求めることを定積分の区分求積法といいます。
これを用いて、この問題を解いて行くことになります。
問題と解答
問題
では、もう一度、問題を見ていきましょう。
問題文に、\(\displaystyle \frac{k}{n}\)が登場してきており、かつ、最後に\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\sum_{n=1}^{n-1}\)という形が出てきているので、区分求積法っぽいなと、問題を見た段階で気づくと思います。
ここからの解答を示しますが、なるべくMVに映っていた手順で解いていきます。
解答
まずは、\(P_k\)と\(P_{k+1}\)の関係を探ってみることにします。\(P\)は\(z\)座標が0なので、\(xy\)在面上に存在します。また、\(P\)の\(x\)座標と\(y\)座標は足すと1になることから、\(P\)は直線\(x+y=1\)上に存在することになります。図示すると次のようになります。
また、\(z\)軸も加えてを描くと次のようになります。
この三角錐\(Q_kP_kP_{k+1}\)の体積を求めいくことにします。三角形\(OP_kP_{k+1}\)を底辺、\(Q_k\)を高さと見て立式していきます。しかし、\(Q_k\)の座標が分からないので、\(Q_k\)の座標を求めることにしましょう。\(\displaystyle \frac{k}{n} = x_k\)とおき、\(Q_k\)の\(z\)座標を\(q_k\)とおくと、\(P_k\)、\(Q_k\)は次のように表せます。
$$ P_k(x_k,1-x_k,0),Q_k(0,0,q_k) $$
問題の条件\(P_kQ_k=1\)より三平方の定理を用いて立式すると、次のようになります。
$$ x_k^2+(1-x_k)^2+q_k^2 =1 $$
これを\(Q_k\)について解くと、次のようになります。
$$ q_k =\sqrt{2x_k-2x_k^2}(∵q_k \geq 0)$$
(MV中の\(8k\)は\(q_k\)の誤植だと思われます)
さて、次に底面積である三角形\(OP_kP_{k+1}\)の面積を求めていくことにしましょう。\(x+y=1\)と\(y\)軸との交点を\(P_0\)、\(x\)軸との交点を\(P_n\)とすると、点\(P_k\)は線分\(P_0P_k\)を\(n\)等分していることになります。よって、
$$ △OP_kP_{k+1}=\frac{1}{n}△OP_0P_n $$
となります。\(△OP_0P_n\)の面積は\(\displaystyle \frac{1}{2}\)ですから、\(△OP_kP_{k+1}\)の面積は\(\displaystyle \frac{1}{2n}\)とわかります。よって、三角錐\(Q_kP_kP_{k+1}\)の体積\(V_k\)は以下のようになります。
$$ \begin{eqnarray} V_k &=& \frac{1}{3} △OP_kP_{k+1}×OQ_k \\ &=& \frac{1}{3} ×\frac{1}{2n}× \sqrt{2x_k-2x_k^2} \\ &=& \frac{\sqrt{2}}{6}×\frac{1}{n} \sqrt{x_k-x_k^2} \end{eqnarray} $$
よって、区分求積法より
$$ \begin{eqnarray} \lim_{n \to \infty}\sum_{n=1}^{n-1} V_k &=& \lim_{n \to \infty} \frac{\sqrt{2}}{6} \sum_{n=1}^{n-1} \frac{1}{n} \sqrt{\left(\frac{k}{n}\right)-\left(\frac{k}{n}\right)^2} \\ &=& \int_{0}^{1} \frac{\sqrt{2}}{6} \sqrt{x – x^2} dx \end{eqnarray} $$
となります。なので、あとはこの積分の式を計算すれば良いだけです。もちろん、置換積分して計算しても良いですが、半円の面積とみて求めた方が簡単なので、そのように求めます。
\(y=\sqrt{x – x^2}\)とおきます。両辺2乗すれば、\(y^2=x-x^2(y\geq0)\)となります。整理すれば、\(\left(x-\displaystyle\frac{1}{2}\right)^2+y^2=\displaystyle\frac{1}{4}(y\geq0)\)となるので、求めたい積分の値は以下の半円の面積になります。
よって、この半円の面積は
$$ \left(\frac{1}{2}\right)^2×\pi×\frac{1}{2}=\frac{\pi}{8} $$
となるので、
$$ \lim_{n \to \infty}\sum_{n=1}^{n-1} V_k = \frac{\sqrt{2}}{6}×\frac{\pi}{8} = \frac{\sqrt{2}\pi}{48} $$
となり、答えが求まります。
おわりに
今回は、バンドエイド剥がすような別れ方に登場する区分求積法の問題を解説しました。この問題自体、区分求積法の演習問題として定番の問題なので、区分求積法の入試演習をひとしきりこなした受験生はおそらく知っているような問題です。受験生の人はぜひできるようにしておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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